オゾンによるノロウイルスの不活化

ノロウイルスが食品衛生法により、食中毒の病因物質として指定されたのは極めて近年(平成9年)のことである。これは遺伝子的な解析技術が発達して原因の特定が可能になったことによるが、ノロウイルスの実験培養系は未だに確立されていないことから、食中毒防止のための対策がまだ十分ではない。

生食用のカキは、加工場でむき身にされたものと、殻付きで生きたままのものとして出荷される。通常前者には塩素による殺菌が施されるが、ノロウイルスは塩素系殺菌剤にある程度の耐性を持っており、また、ノロウイルスの不活化を目的として塩素濃度を上げるとカキの味覚を著しく損なう問題がある。 
 
オゾンによるノロウイルスの不活化の実験は、微量のオゾンを含んだ酸素をマイクロバブルとして発生させ、海水が飽和した段階で、容器の上方からノロウイルスを含むサンプル水を添加、水中のオゾン濃度は約1mg/L程度と低いものであったが、ノロウイルスが完全に不活化されていることを確認した。なお、ノロウイルスの不活化は、東京都健康安全研究センターの協力で、RT-PCR法(遺伝子の発現解析法で、ウイルス不活化の確認において信頼性が高い手法)により確認されている。なお、オゾンによるウイルス不活化のメカニズムとしては、オゾンが分解して酸素に変化するときに発生する・OHなどのフリーラジカルの作用で、これは不対電子を持つ原子団であり、殺菌効果をもたらす
水中に存在する細菌などの微生物に関しては、ノロウイルス以外にも循環型浴槽のレジオネラ菌やコイヘルペスなどが大きな問題となっている。これらに対しても、大きな効果が期待できる。

 

オゾン水によるノロウイルス不活化効果

検査番号
試験液200μlあたりの
ノロウイルス不活化測定
ノロウイルス
(懸濁液)
添加処理液 
(試験液)
接触時間
60秒後
① 対照区
ノロウイルス懸濁液
ノロウイルス
200μl
ノロウイルス陽性
検出(+)
② 対照区
ノロウイルス+水道水、
添加処理液
ノロウイルス
50μl
水道水
150μl
ノロウイルス陽性
検出(+)
③ 試験区
ノロウイルス+オゾン水
添加処理液
ノロウイルス
50μl
オゾン水150μl
ノロウイルス陰性
検出せず (-)
④ 試験区
ノロウイルス+オゾン水
添加処理液
ノロウイルス
50μl
オゾン水150μl
ノロウイルス陰性
検出せず (-)

試験装置 : (株)タムラテコ製、オゾン水生成装置
条   件 : オゾン水濃度0.8ppm
検査方法 : RT-PCR法

 
電気泳動写真
(ノロウイルス陽性の場合は344bpの位置にバンド出現)

なお、オゾンは最終的には完全溶解して酸素に分解するため、食用として安全である。これら体内浄化を含めた技術が確立できれば、食用として安全であるばかりでなく、味覚にも優れたカキの出荷が可能となる。

オゾンによるアデノウイルス対策

アデノウイルス対策(東京新聞2004.6.1)
大学病院で結膜炎多発(過去10年間 全国の49施設 ウイルス性院内感染 眼科病棟の閉鎖も)
調査対象は国内のすベての大学病院眼科93施設。62施設が回答し、1993~2002年に約8割の49施設でウイルス性結膜炎の院内感染が発生したことが分かった。
病原体はいずれも肺炎やプール熱を起こすアデノウイルスだった。決め手となる予防、治療法はなく、13施設で30人以上が感染、40人を超えたところもあった。医療関係者の感染も約6割の施設であり、同大は「医師や受付事務員が感染を広げる危険性もある」としている。
発生後の対応は、感染者に退院してもらって拡大を防いだ施設が32、個室に隔離したのが29施設、眼科の入院患者全員に退院してもらう病棟閉鎖に追い込まれた施設も16あった。
1月と9月に特に多く、年末年始、お盆で入院患者の入れ替わりが激しいことが影響しているとみられる。診療機器を介して感染した例が最も多く、研究グループは消毒の重要性を指摘している。

アデノウイルスとは
感染性結膜炎の原因となる。上下気道炎や肺炎、胃腸炎のほか、プール熱と呼ばれ学校などでの集団発生もみられる咽頭(いんとう)結膜熱も引き起こす。患者との接触や、鼻水、唾液(だえき)などを介してうつり、血流などで全身に広がる。40種類以上の型があり、子供への感染も多い。潜伏期間は1~2週間。